最近ニュースやSNSでよく見かける「不同意性交等罪(以下、不同意性交罪)」。
一方でコメント欄には
- 「女の人の証言だけで捕まるんじゃないか…」
- 「別れたあとに『やっぱり嫌だった』と言われたらどうしたらいいの?」
- 「冤罪になったら人生終わる」
こんな“怖さ”やモヤモヤした声もたくさんあります。
この記事では
- 不同意性交罪ってどういうものか
- 実際はどうやって「不同意」を証明しているのか
- 虚偽告訴は本当に“やり得”なのか
- それでも残る不安をどう考えればいいのか
を、できるだけわかりやすい言葉で整理してみます。
※特定の事件について「有罪・無罪」を決めつける目的ではありません。
※「被害を訴える側」と「訴えられる側」両方の不安を並べて考えてみる、というスタンスです。
不同意性交罪ってどういうもの?
細かい法律の言い回しは置いておいて、ざっくり言うとこんなイメージです。
相手が「NO」と言えない状態なのを分かっていて、そのすきにつけこんで性行為をしたらアウト
交際中・元恋人・夫婦かどうかは関係ない
たとえば
- 酔っていて判断ができない
- 怒られそうで怖くて断れない
- 立場の差(上司・先生など)があり、とても「嫌だ」と言えない
こういう“断りにくい状態”を利用して性行為をするのも、違法になり得るという考え方です。
昔の法律は
- 「暴力」「脅し」がハッキリしていないと性犯罪として認められにくい
- 夫婦・恋人どうしだとなおさら「なかったこと」にされやすい
という問題がありました。
そこを直そうとしてできたのが、この不同意性交罪です。
なぜ「冤罪が怖い」と言われるのか
SNSやコメント欄ではこんな不安がよく出てきます。
- 「女性の証言だけで逮捕されそうで怖い」
- 「付き合ってる間は普通に会ってたのに、別れたあとに『あれは性暴力だった』と言われたらどうしようもない」
- 「草津の事件みたいな冤罪もあったのに、訴えた側の処罰が軽く感じる」
つまり、多くの人が心配しているのは
- 証言1つで逮捕・勾留されそうなイメージ
- 後から“不同意だった”と言われたら防げない気がすること
- 一度名前が出たら、無罪でも社会的には終わるのでは?という恐怖
このあたりです。
「被害者を守りたい気持ちは分かるけど、自分もいつ加害者にされるか分からないのは怖すぎる」
という声ですね。
実際にはどうやって「不同意」を立証しているのか
ここが一番気になるところだと思います。
現実の捜査や裁判では、だいたい次のようなものがチェックされます。
① 被害を訴えた人の話の中身
- 話の流れが具体的か
- 時系列が大きく矛盾していないか
- 何度聞いても内容が大きく変わらないか
など「どれくらい信用できそうか」が見られます。
② 2人のやり取りの記録
たとえば
- LINEやDM、メール
- 「痛い」「嫌だ」と送っているメッセージ
- そのあと加害を疑われている側が謝っているメッセージ
などがあれば重要な材料になります。
③ 当日の客観的な記録
- ホテルや自宅周りの防犯カメラ
- タクシーアプリや交通ICカードの履歴
- コンビニなどのレシート
「その場所に一緒にいたのか」「どんな時間帯だったのか」といったことをこうした記録から補強していきます。
④ 医師や第三者の証言
- 病院の診断書
- 心療内科・カウンセリングの記録
- 友人や家族に打ち明けていた内容とタイミング
これらも「本当にしんどい出来事だったのか」を見ていく材料になります。
つまり、いきなり証言1つだけで「はい有罪です」となるわけではありません。
もちろん、捜査や運用がいつも完璧とは限りません。
でも、制度としては
いくつもの証拠を重ねて「不同意だった可能性が高い」と判断できるかどうか
がポイントになっています。
「訴えられた時点で人生が壊れる」問題
とはいえ多くの人が一番怖いのはここかもしれません。
無罪でも不起訴でも、一度「性加害で逮捕」「容疑者」と報じられたら仕事も人間関係も壊れてしまうのでは?
草津町長の冤罪事件のように
- 後から「虚偽だった」と認められても
- 告発した側は執行猶予付きの判決で終わり
- 告発された側のイメージや人生は完全には戻らない
という現実があります。
このアンバランスを見て
「被害を訴えるのは大事だけど、訴えられた側の人生が軽く扱われていないか?」
と感じる人がいるのも自然なことだと思います。
虚偽告訴は本当に“やり得”なのか
「嘘ついてもノーリスクでは?」という不安もよく語られます。
実は法律上は、虚偽告訴という犯罪があります。
とてもざっくり言うと
「相手に罰を与えたい目的で、意図的に嘘の犯罪をでっち上げたらそれ自体が犯罪」
というものです。
つまり、「虚偽告訴し放題」「告訴した側はノーダメージ」という設計にはなっていません。
ただし現実には
- 「わざと嘘をついた」と証明するのが難しい
- 虚偽告訴が認められても、告発された側の人生が完全に戻るとは限らない
こうしたギャップはどうしても残ります。
そのため、
「法律の上では一応バランスを取ろうとしているけれど、感覚的にはまだ公平とは言いづらい」
と感じる人が多いのも無理はないと思います。
男性側ができる“現実的な防御”
「じゃあ、男性側はどうしたらいいの?」という話も少しだけ。
100%の正解はありませんが、現実的にできることを挙げると…
① “空気読んでくれるはず”をやめる
- 「黙ってたからOKなんだろう」
- 「嫌なら嫌って言うでしょ」
という前提は今の時代かなり危険です。
- 「ここまでして大丈夫かな?」
- 「痛くない?嫌じゃない?」
と、その都度言葉で確認することが自分を守ることにもつながります。
② 相手の「嫌そう」を軽く見ない
- はっきり固まっている
- 涙目になっている
- 行為のあと、明らかに様子がおかしい
こういうサインが出ているのに、
- 「照れてるんだろう」
- 「そういうプレイかな」
と勝手に解釈して続けるのはかなり危ないです。
- その場でやめる
- 後から「本当に大丈夫だった?」と聞く
- 「嫌だった」と言われたら素直に謝って同じことをしない
こういう対応が、結果的に一番自分を守ります。
③ 本当に不安なら、専門家に相談する
- 「過去の行為がまずかった気がする」
- 「今トラブルになりかけている」
こういう場合はネットやSNSの意見ではなく、弁護士などの専門家に相談した方が確実です。
不同意性交罪は、まだ運用が固まっていない部分も多い法律です。
素人判断で「これはセーフでしょ」と決めつけるのは危険です。
それでもモヤモヤが残るのは“普通”かもしれない
最後に、少し感想です。
- 今までほとんど救われてこなかった性被害をちゃんと救いたい
- 一方で、冤罪や一方的な社会的制裁も絶対に防ぎたい
この2つはどちらも大事です。
だから
- 「被害者の声を信じよう」という意見
- 「冤罪を怖がるのはおかしくない」という感覚
本当は両方、大事にしないといけないはずです。
「被害者のことを思うと胸が痛い」
でも
「冤罪のニュースを見ると、自分がやってないことで人生壊されるのも怖い」
こうやってどっちの気持ちも揺れるのはむしろ自然な反応だと思います。
まとめ|「被害者か加害者か」だけでは語り切れない
最後に、ポイントをカンタンにまとめます。
- 不同意性交罪は、「暴力・脅し」だけでなく“同意できない状態”を利用した性行為も性犯罪として扱うための法律
- 実際の捜査や裁判では、証言だけでなくLINE・防犯カメラ・診断書・第三者の証言など複数の材料で「不同意だったか」を見ている
- それでも「訴えられた時点で人生が壊れる」「草津の冤罪のようなケースがある」という不安が消えないのも事実
- 虚偽告訴をした側も犯罪として処罰され得るが、告発された側の人生が完全に戻るとは限らずアンバランスさは残る
- 被害者を守ることと冤罪を防ぐこと。
どちらか片方だけを守るのではなく両方をどう両立させるかを考えていく必要がある
不同意性交罪をめぐる議論はどうしても
「被害者の味方か加害者側の味方か」
という二択にされがちです。
でも多くの人の本音はたぶん、
「被害にあった人も守りたいし、やっていない人の人生も守りたい」
この真ん中の感覚ではないでしょうか。
そのモヤモヤをちゃんと言葉にしていくことが、
この法律と社会が少しずつ“ちょうどいい距離感”を探していくために必要なプロセスなのかなと思います。


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