中国軍機による自衛隊機への「レーダー照射」とそのあとに中国側が公開した「音声データ」が話題になっています。
ニュースを読んでも
「何がきっかけで起きたのか」
「音声データは結局、何を示しているのか」
と分かりにくく感じる方も多いと思います。
この記事では
- いつ・どこで何があったのか
- 中国側が出した「音声データ」がどんな内容なのか
- それをめぐって日中それぞれが何を主張しているのか
を時系列で整理しながら専門用語はできるだけ使わずに説明していきます。

安全保障のニュースって、感情的な言葉も多くて、じっくり整理しないと「結局どういう話?」となりやすいな…と感じています。
事件の概要
まずは、今回の出来事がどんなものだったのかをシンプルに整理します。
- 日時:2025年12月6日
- 場所:沖縄本島の南東にある公海上空(日本の領空の外側)
- 中国側の機体:空母「遼寧」から発進した戦闘機 J-15
- 日本側の機体:航空自衛隊の戦闘機 F-15
日本の防衛省によると中国の J-15 戦闘機がミサイル発射の際などに使う「攻撃用レーダー」を
航空自衛隊の F-15 に向けて2回照射したとされています。
攻撃用レーダーを向けられることは、「ロックオンされた」と受け取られ実際の攻撃につながりかねない危険な行為と考えられています。



「実際に撃ってはいないからセーフ」という話ではなく、相手からすると「攻撃されるかもしれない」と身構えざるをえない行動なんだろうな…と思いました。
最初のレーダー照射報道
ここでは、日本側が最初にどのように発表したのかを見ていきます。
日本政府は12月7日、記者発表と会見で次のように説明しました。
- 12月6日、沖縄本島南東の公海上空で、中国の J-15 戦闘機が F-15 に対し2回レーダー照射を行った
- 照射はそれぞれ数分以上続き、航空機の安全な飛行を妨げる危険な行為だと判断
- 日本政府は中国側に対し
- 「極めて遺憾」
- 「断じて容認できない」
として外交ルートで強く抗議
- 自衛隊機や隊員に目立った被害は確認されていない
外務省も中国大使を呼んで正式に抗議し、再発防止を求めました。



危険な行為にはきちんと抗議しておかないと、今後「やっても大丈夫」と思われてしまうので、ここで強い言い方になるのはある意味当然かなとも感じます。
中国側の反論&音声公開
中国側がどのように反応し「音声データ」を出してきたのかを整理します。
日本の発表のあと中国国防省や国営メディアは、「日本側の説明は事実と異なる」として反発しました。
その流れの中で12月9日ごろから中国側はSNS(微博や微信など)で「無線の音声データ」を公開しました。
中国側の説明はおおまかに次のような内容です。
- 空母「遼寧」周辺であらかじめ計画していた艦載機(戦闘機)の飛行訓練を行っていた
- 訓練開始前に中国海軍の「101艦」から海上自衛隊の護衛艦「116艦」(てるづき)に無線連絡を行った
- 連絡の内容は「これから○時から○時間、空母の南側で艦載機の訓練を行う」という事前通知
- 日本側の艦は「メッセージを受信した」と応答しているように聞こえる
さらに中国は
- 自衛隊機からのレーダーも感知していた
- 自分たちが設定した訓練区域の近くまで自衛隊機が接近した(最短で約50kmと主張)
と説明し「日本側もレーダーを使い、訓練空域に近づいてきた」と反論しています。



「うちもやられた」「そっちも悪い」という言い方は、どこの国でもよく見られるパターンですが少し論点をぼかしているようにも感じました。
音声データ(無線)の中身
問題になっている「音声データ」がどのようなものかをできるだけ分かりやすく整理します。
公開されたのは中国軍が録音したと主張する無線の音声です。
実際の会話は
- 中国語と英語で行われているとされ
- これに中国側や日本のメディアが日本語字幕やナレーションを付けて動画として紹介しています。
報道で紹介されている会話の概要は次のような内容です。
- 中国側:「こちらは中国海軍101艦。当編隊は、計画どおり艦載機の飛行訓練を実施する」
- 日本側:「中国海軍101艦、こちら日本の116艦。メッセージを受信した」
つまりこの音声は
- 「これから訓練をします」と伝える中国側
- 「了解しました」と返答する日本側
という訓練開始前のやり取りを示すものです。
ここで重要なのは、
- 音声データは訓練の事前連絡に関するやり取りであり、
- レーダー照射そのものの瞬間を録音したものではない
という点です。
また日本の防衛相は会見で
- 無線でのやり取りがあったこと自体は認めつつも
- 「中国側が言うような“正式な事前通告”があったとは認識していない」
と説明しています。
中国側が公開したとされる音声データは、Yahoo!ニュースのこちらの記事から実際に聞くことができます。



正直なところ、日本側にも独自の記録や音声があるなら可能な範囲で公開してくれたほうが国民としては判断しやすいのにな…と感じました。
日中それぞれの主張整理
今回の出来事をめぐって日本と中国がどのように主張しているのかを並べて整理します。
まず、日本側と中国側では問題だと考えているポイントの置き方が少し違うように見えます。
日本側の主張・見方
日本政府・防衛省が強調している主な点は次のとおりです。
- 中国 J-15 戦闘機が、航空自衛隊 F-15 に攻撃用レーダーを向けたこと自体が危険で認められない行為である
- 自衛隊機は、国際法上問題のない公海上空での警戒・監視活動を行っていたに過ぎず中国側の訓練を妨害する意図はなかった
- 中国側が言う「事前通告」については、通常出されるべき航行警報(NOTAMなど)の形での通知は確認できていないと説明
- 無線でのやり取りがあったことは認めつつも、それとレーダー照射の問題は別であり照射は正当化できないという立場
まとめると日本側は、
「訓練の有無に関わらず、他国機に攻撃用レーダーを向ける行為は危険であり容認できない」
という姿勢を取っています。
中国側の主張・見方
一方で中国側が発信している主なポイントは次のとおりです。
- 空母「遼寧」周辺で行ったのは、あらかじめ計画された正当な訓練である
- 訓練の時間や場所について、中国艦から日本の護衛艦に対し無線で事前に連絡を行っている
- 自衛隊機は、中国側が設定した訓練空域の近くまで接近し中国機も日本側のレーダーを感知した
- そのため「中国だけが危険行為を行った」という日本側の主張は不公平であり日本側の行動も緊張を高める要因になっていると反論
このように中国側は、
「正当な訓練に日本が近づいてきた結果、緊張が高まった」
という構図で説明しようとしているとみられます。



「訓練していたから大丈夫」という主張は、レーダー照射そのものの是非とは別の話で少し論点をずらしているようにも感じました。
SNSの声
ここでは、X(旧Twitter)などで見られる反応の傾向をいくつかのパターンに分けて紹介します。
SNS上では、この音声データや一連のニュースについて次のような意見が多く見られます。
- 音声の信ぴょう性を気にする声
- 「本当に自衛隊との会話なのか分からない」
- 「編集の有無など、第三者が検証しづらい」
- 双方の説明を“切り取り”と見る声
- 「日本も中国も自国に有利な部分を強調しているのではないか」
- 「日本も中国も自国に有利な部分を強調しているのではないか」
- 情報戦(プロパガンダ)としてとらえる声
- 「音声公開自体が国内外向けのイメージづくりの一環だ」
- 「軍事行動だけでなく、世論にどう見せるかという情報戦も行われている」
- エスカレートへの不安を示す声
- 「危険な行為には抗議が必要だが、偶発的な衝突につながらないか心配だ」
- 「小さな行き違いが大きな事故につながらないようにしてほしい」



情報が小出しで出てくるとどうしてもSNS上では感情が先走りがちですが、本当は「冷静に事実を確かめたい」と思っている人が多いのではないかなと感じています。
まとめ
最後に、今回のポイントをコンパクトに整理します。
- 2025年12月6日、中国 J-15 が沖縄近海上空で自衛隊 F-15 にレーダー照射したと日本が発表
- 中国は「訓練を事前に連絡していた」とする無線の音声データを公開して反論
- 音声は「これから訓練する」「了解した」というやり取りでレーダー照射そのものの記録ではない
- 日本は「正式な通告とは言えない」「レーダー照射は危険で認められない」と主張
- 中国は「正当な訓練に日本機が近づいた」として、一方的な非難は不当だと訴えている
どちらか一方の言い分だけで判断するのではなく
「何が事実として確認されているのか」
「各国がどう主張しているのか」
を分けて考えることが大事だなと感じます。











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