「精神疾患は甘えじゃない」――元救急隊員が出会った“強すぎた人たち”の真実

精神疾患なんて、メンタルが弱い人がなるものでしょ?

結局、甘えてるだけじゃないの?

そんな言葉を耳にするたび、胸が締めつけられるような気持ちになります。

私は十数年間、救急隊員としてさまざまな現場に出動してきました。

その中には、精神的な不調を訴えて救急要請された方も少なくありません。

最初の頃、私もどこかで「救急車を呼ぶほどのことなのか?」と感じたこともありました。

しかし、何度もそういった現場に立ち会う中で、ある“共通点”に気づかされたのです。

それは――精神的に『弱い人』が崩れるのではない。

むしろ、『心が強すぎる人』が限界を迎えてしまうのだという事実でした。

目次

我慢強い人ほど、自分の限界に気づけない

救急車で搬送する道中、傷病者からこんな言葉を何度も聞きました。

「もっと早く休めばよかった…」

「誰にも迷惑をかけたくなくて…」

そう言って涙をこぼす姿に、こちらの胸も締めつけられます。

彼らは決して「怠けたい」と思っていたわけではありません。

むしろ、ギリギリの状態でも「まだ頑張れる」と自分を奮い立たせていたのです。

・体調が悪くても無理して出勤
・家族のために自分のことを後回し
・「こんなことで休んだら申し訳ない」と自分を責める

そんなふうに、どこまでも責任感が強くて、真面目な人ばかりでした。

だからこそ、自分の限界を見失い、心が突然ぷつんと切れてしまうのです。

「ごめんなさい」じゃない。「助けを求めてくれてありがとう

搬送中、精神的な不調で救急車を呼んだ方が、何度も頭を下げて謝る姿を見てきました。

すみません…こんなことで…

他のもっと重症な人に申し訳ない…

でも私は、いつもこう思っていました。

「謝らないでください。むしろ、助けを求めてくれてありがとう」

心が限界を迎えたとき、「助けて」と言うのは本当に勇気がいることです。

それを言えたあなたは、決して弱くなんかない。

むしろ、

「耐える」ことよりも、「頼る」ことのほうが、ずっと難しい。

だから私は、119番をかけてくれたあなたに感謝の気持ちを伝えたい。

本当に『強い人』は、“休む勇気”を持てる人

自分よりもっとつらい人がいるのに…

こんなことで休んじゃダメだよね…

そう自分を追い詰める人に、私は伝えたい。

休むことは“甘え”じゃない。
それは、自分を守るための“勇気ある選択”です。

身体のケガと違って、心の不調は目に見えません

だからこそ、本人も気づかないうちに、無理を重ねてしまう。

けれど、心の悲鳴を無視し続ければ、ある日突然すべてが崩れてしまうかもしれない。

「無理をしないこと」が当たり前に認められる社会であってほしい。

それが、元救急隊員としての私の願いです。

「精神的な不調で救急車を呼ぶなんて」と言う前に

もちろん、救急車は限られた資源です。

本当に必要な人のために、適正利用を」という考えもよく理解しています。

けれど、精神的な理由で何度も救急要請を受けた私はこうも感じていました。

「今は命に直結していなくても、このまま誰にも助けを求めなければ、
自傷や自殺、他害につながっていたかもしれない」

救急隊の仕事は、『今すぐ命に関わる人を助ける』ことだけではありません。

「これから命の危機に陥るかもしれない人を守る」ことも、私たちの大切な使命です。

だから私は、精神的につらくて119番をかけた人を責める気にはなれません。

むしろ、「その一歩を踏み出してくれてありがとう」と伝えたいのです。

まとめ:あなたが苦しいのは、「弱い」からではない

精神疾患に苦しんでいるすべての人へ。

あなたが今、苦しいのは、「心が弱いから」ではありません。

むしろ、「誰よりも頑張ってきた」からこそ、限界を迎えたのです。

どうか、ひとりで抱え込まないでください。

「助けて」と言える社会に。
もっと気軽に休める社会に。

私はこれからも、元救急隊員として、現場で出会った“強すぎた人たち”の声を代弁し続けたいと思います。

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