「子どもが熱を出している。以前けいれんを起こしたことがあるから、また起きるかもしれない…」
「怖いから、念のため救急車を呼ぼうか…」
そんな不安を抱えた経験がある親御さんも多いのではないでしょうか。
私は元救急隊員として、日々さまざまな子どもの救急要請に対応してきました。
その中で感じたのは、「熱性けいれんを“起こしていない”のに、再発の不安から救急要請するケースが意外に多い」という現実です。
今回は、熱性けいれんにおいて本当に救急車が必要な場面とはどんなときか?
そして、予防的に呼ぶことで生じるリスクや、親としてどう向き合うべきか?
現場の声と親目線を交えて、わかりやすく解説します。
■ 熱性けいれんとは?
熱性けいれんとは、主に生後6か月〜5歳ごろの乳幼児が、発熱に伴ってけいれんを起こす状態を指します。
特に風邪やインフルエンザなどの発熱時に起きやすく、数分以内におさまることが多いものです。
ほとんどは後遺症もなく、時間が経てば元通りになります。
■ けいれんが起きたときは、救急車を呼んでOK
まず大前提として、実際にけいれんが起きている場合には、迷わず救急車を呼んでください。
以下のような状態は、明らかに緊急対応が必要です。
- けいれんが5分以上続いている
- けいれん後に意識が戻らない
- 顔色が悪く、呼吸が弱い
- 初めてけいれんを起こした
- 呼びかけても反応がない状態が長く続いている
こうした症状があれば、すぐに119番通報を。
「けいれん=すぐに落ち着くから大丈夫」ではなく、あくまで症状次第で判断することが重要です。
■ ただし、「再発が怖いから呼ぶ」はNG
問題は、「今はけいれんしていないけど、以前けいれんを起こしたことがある」というだけで救急要請するケースです。
たとえば…
- 高熱が出た=普段通りではあるが、またけいれんが起きるかもしれない
- 念のため病院に行きたいから救急車を呼ぶ
このような予防的な救急要請は、基本的には適切ではありません。
なぜなら、
- 現時点で命に関わる症状が出ていない
- 病院へ行く手段がある(家族やタクシーなど)
- 救急車を使わなくても医療機関の受診は可能
という場合には、本当に必要な現場への救急車の対応が遅れてしまう恐れがあるからです。
■ 救急車は“予防”のためのツールではない
救急車は、『今、命の危険がある人』のために用意された限られた資源です。
ある親御さんが「けいれんするかもしれないから…」と呼んだ救急車が、数分後に起きた交通事故の重傷者のもとに向かえなかった…そんなことが実際に起こり得ます。
予防的に呼びたくなる気持ちは痛いほどわかります。
ですが、予防と安心のために使うべきではないという点をぜひ知っておいてください。
■ 迷ったら「#8000」や「#7119」を活用
「でも、それでもやっぱり不安でたまらない…」
そんな時こそ活用してほしいのが、医療電話相談窓口です。
▶ #8000(子ども医療電話相談)
夜間や休日に、小児科医や看護師が対応。
「この症状で救急受診が必要かどうか」を電話で相談できます。
例:
「子どもが38.5℃の熱。以前熱性けいれんを起こしたことがある。今は元気だがどうすれば…?」
といった相談にも親身に対応してくれます。
▶ #7119(救急安心センター)
一部の地域に限られますが、救急要請の判断に迷ったとき、医師や看護師が直接アドバイスしてくれる窓口です。
■ 「受診するな」と言いたいわけではありません
誤解のないように言えば、私は決して「病院に行くな」「受診するな」と言いたいわけではありません。
子どもの様子に不安があるなら、必ず医師の診察を受けるべきです。
問題は、「その手段として、本当に救急車が必要か?」という点です。
- 自家用車やタクシーで行ける場合はそちらを優先
- 日中であれば、近隣の小児科を受診
- 夜間・休日は#8000に相談後、必要に応じて救急外来へ
こうした『段階的な判断』を身につけておくことが、子どもを守るうえでとても大切です。
■ 最後に:私も子を持つ親として
私自身、今では子を持つ親です。
だからこそ、「またけいれんしたらどうしよう」「後悔したくない」そんな不安な気持ちは痛いほどわかります。
けれど、親として、そしてかつて救急の現場にいた者として、「本当に救急車が必要な人のために空けておく判断」も、立派な勇気だと伝えたいのです。
不安なときは、迷わず相談してください。
その上で、必要なときにはためらわずに119番を。
🔍 まとめ:熱性けいれんと救急車の使い方
✅ 実際にけいれんが起きているなら、すぐに救急車を呼ぶ
✅ 再発が心配なだけでけいれんしていないなら、まず相談窓口を活用
✅ 受診そのものは否定せず、手段としての救急車の適正利用を意識
✅ 「予防のための救急要請」はリソースを圧迫する可能性がある
✅ 親の直感や不安を無視することなく、冷静に選択を
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