サイレンを鳴らしながら近づく緊急車両。
それに気づきながらも、横断歩道を渡り続ける人を見かけたことはありませんか?
私は元救急隊員として、救急車の運転を通じてこのような場面を幾度となく経験してきました。
特に信号のある交差点では、赤信号でも平然と横断する大人の姿が目立ちます。
そしてその背中を、子どもたちは確実に見て学んでいるのです。
この記事では、なぜ「止まらない大人」が増えているのか、そしてその行動が子どもたちに与える影響について現場での体験をもとにお伝えします。
子どもは“大人の行動”を真似して育つ
子どもは言葉よりも、目にした行動を真似て育ちます。
大人が交通ルールを無視し緊急車両が来ていても立ち止まらない姿を見せれば、子どももそれを“正しい行動”だと思ってしまうのです。
実際に私が緊急走行中、『子どもだけが立ち止まり、大人がそのまま渡っていく』という場面を何度も目にしました。
スマートフォンを見ながら無意識に横断する大人。
その後ろを、何も疑わずについていく子ども。
そんな光景は決して珍しくありません。
「大人がやっているから大丈夫」――その心理が、子どもたちの命を危険にさらしているのです。
緊急車両は「一刻を争う現場へ向かう存在」
緊急車両は、命を救う・守るために、時間との戦いをしている存在です。
救急車はもちろん、消防車や警察車両も含め、緊急車両が赤信号の交差点に進入するのは法令に基づいた特例です。
ですがそれは、『他の交通を妨げず、安全を十分に確認した上で』という条件のもとで許されている行為です。
歩行者が止まらなければ、緊急車両は進むことができません。
その数秒〜数分の遅れが、現場での状況に大きな差を生むこともあるのです。
特に救急現場や火災現場では、一刻の遅れが命取りになることすらあります。
緊急車両が優先されるのは、特別扱いだからではありません。
誰かの命や安全がかかっているからこそ、社会全体でその道を開ける必要があるのです。
交通安全教育は十分か?
学校では、信号の見方や横断歩道の渡り方、自転車の乗り方など、交通ルールについての授業は行われています。
しかし、緊急車両にどう対応するかまで教えられる機会は、まだまだ少ないのが現実です。
たとえば、
「サイレンが聞こえたらどうする?」
「緊急車両が近づいてきたら止まるべき?」
といった場面を授業で取り上げることはほとんどありません。
そして、教科書や座学だけでは、『命を優先する判断』や『思いやりの行動』までは伝えきれないのです。
それを伝えるのは、日々の暮らしの中で目にする大人の行動や、社会全体の空気です。
授業に取り入れたい「当たり前のマナー」
私は、『交通安全教育』の枠を超えて、緊急車両への対応を教育現場でも教えるべきだと考えています。
たとえば、以下のようなシンプルな内容でも、子どもたちの意識や行動は大きく変わります。
- サイレンが聞こえたら立ち止まり、周囲を確認する
- 渡る直前でも、一度止まって様子を見る
- 「大人の行動を見ている自分」に気づく視点を持つ
これらは単なるマナーではなく、『命を守る“生きた教育”』です。
子どもたちにとって本当に必要な知識は、現場のリアルな声と結びついた実践的な教えです。
まとめ:子どもの未来は“大人の行動”がつくる
子どもは、常に大人の背中を見ています。
緊急車両が来ても無関心な大人、信号無視をする大人。
そんな行動は、日常の中で無意識に「マナー」として子どもに受け継がれていきます。
誰かの命を救うために走る緊急車両。その妨げにならないように、私たち大人が“止まる”という選択をする。
それが、子どもたちの命を守る第一歩であり、未来を守る行動だと私は信じています。
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