「子どもの体調が急に悪くなった…」
「こんなとき、救急車を呼んでいいのかな?」
小さなお子さんを持つ保護者であれば、一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。
私は元救急隊員として、日々さまざまな救急要請に対応してきましたが、「呼んで正解だった」と思える事案もあれば、「これは本当に必要だったのか…」と疑問を抱かざるを得ないケースもありました。
今回は、そんな現場経験を踏まえながら子どもが体調を崩したときに救急車を呼ぶべきケースと迷ったときに使える判断基準についてわかりやすくお伝えしていきます。
■ 救急車を呼ぶべき“明確なケース”
まず、迷うことなく119番通報すべき症状から紹介します。
以下のような状態があれば、すぐに救急車を呼んでください。
- 意識がない、または呼びかけても反応が弱い
- 呼吸が苦しそう(ぜーぜー音がする、肩で息をしている、唇が紫色)
- けいれんが止まらない、またはけいれん後に意識が戻らない
- 大量の出血がある
- 高い所から落ちた(特に頭部打撲)
- 熱が高く、ぐったりして反応が悪い
- 誤飲・誤食(電池、薬、薬のパッケージ、洗剤など)
これらは命に関わる可能性があります。
『迷ったら呼ぶ』で構いません。
■ こんなときはまず落ち着いて
一方で、「心配ではあるけど、救急車を呼ぶほどかどうか迷う」というケースも多いです。
以下のような状態では、すぐに救急車を呼ばなくてもまずは様子観察や相談窓口の活用が望ましい場合があります。
- 発熱だけで、意識や呼吸に問題がない
- 軽い咳や鼻水が出ている
- 食欲はやや落ちているが、水分は取れている
- 頭を打ったが、泣いてすぐに普段通りになった
- 嘔吐が1回だけ、顔色も悪くない
そして意外に多いのが、
指や腕、足などを少し切ってしまい、出血があったもののすぐに止まった
といった軽度の外傷での救急要請です。
出血を見るとパニックになることもありますが、止血が確認でき本人が泣いていても意識があり普段どおりの反応があるようなら、救急車を呼ぶ必要はありません。
この程度で救急車を呼んで受診した場合、搬送先の医師から「これくらいで救急車を呼ばないでください」と注意されることも実際にあります。
■ 「受診するな」と言いたいわけではありません
ここで強調しておきたいのは、決して「医療機関を受診するな」と言いたいわけではないということです。
子どもの体調不良は親にとって深刻な不安材料ですし、医師の診察を受けて安心したいという気持ちはごく自然です。
ただし、重要なのはその手段です。
救急車は“命に関わる緊急時の手段”であり、
「不安だから」「近くに車がないから」といった理由で使うものではありません。
あくまで、必要性のある手段で受診することが求められます。
■ 迷ったときは「#8000」や「#7119」の相談窓口を活用
「それでも判断がつかない…」という方におすすめなのが、以下の電話相談窓口です。
▶ #8000(子ども医療電話相談)
全国共通の番号で、各都道府県の小児科医や看護師が、夜間・休日の体調不良に関する相談に応じてくれます。
例:「夜に38℃の熱。本人は元気そうだが病院に行くべきか迷っている」
→ 適切なアドバイスが受けられます。
▶ #7119(救急安心センター)
地域限定ではありますが、医師や看護師が対応し、救急車が必要かどうかの判断を電話でサポートしてくれます。
これらのサービスは、「すぐに病院へ行くべきか迷ったとき」や「救急車を呼ぶべきか悩むとき」に非常に有効です。
■ 救急車は『誰かの命を救うツール』
救急車は無料で呼べるため、つい「念のため」「安心のため」に呼びたくなる気持ちはとてもよくわかります。
しかしその一方で、1台の救急車が出動している間、その救急車が他の緊急事案に対応できなくなるという現実があります。
遠方の救急車が応援に回ることで、対応が遅れる可能性も十分にあり得ます。
たとえば、
「熱が出ているから、またけいれんを起こすかもしれない。念のため呼んでおこう」
といった予防的な救急要請は、その間に本当に命が危険な傷病者への対応が遅れてしまう可能性があるのです。
■ 親の直感も大切に
ここまで『呼ぶべきかどうかの判断基準』についてご紹介してきましたが、親の直感や不安感を軽視するつもりは一切ありません。
「いつもと違う」「何か変だ」
そういった違和感は、マニュアルでは判断できない大事なサインです。
その時は迷わず119を。
迷ったら相談する、行動する、そして子どもを守る。
その判断を否定するものではありません。
私自身も、子を持つ親として子どもの体調の変化には敏感になりますし、不安に襲われる気持ちも痛いほどよくわかります。
だからこそ、「少しでも安心したい」「念のため診てもらいたい」と思うのは当然のことだと思います。
ただ、不安な気持ちを少しでも落ち着ける手段として、#8000や#7119といった相談窓口を活用するという選択肢もぜひ覚えておいてください。
■ 最後にひとこと
救急車は『いざという時』に使うべき、大切な命のツールです。
本当に必要な人のもとに届くように、「呼ばない勇気」と「相談する知恵」も、私たち親にとって大切な判断力です。
冷静な判断と日頃の備えを、私たち一人ひとりが心がけていきましょう。
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