「熱中症を予防しましょう」──
毎年暑くなると、テレビやSNSなどで毎年のように聞こえてくる言葉です。
確かに予防は大切です。
ですが、元救急隊員として数多くの現場を経験してきた私はある危機感を抱いています。
それは、「熱中症は防げるもの」という意識が強すぎて、実際になってしまったときの対応が後手に回ることが多いという現実です。
熱中症は、年齢や体力に関係なく、誰にでも起こりうるもの。
しかし、正しい知識と初期対応を知っていれば、重症化を防ぎ、救急車を呼ばずに済むケースも多くあります。
この記事では、元救急隊員の立場から『熱中症になってしまった後』の対応にフォーカスしてお伝えします。
命を守り、そして限られた医療資源を守るためにも、ぜひ最後までお読みください。
熱中症は誰にでも起こる。だから“想定”しておくべき
「自分は若いから大丈夫」「水分を摂っているから平気」──
そんな過信が、熱中症では命取りになります。
炎天下での活動はもちろん、室内であっても、エアコンを使わずに過ごしたり、脱水状態が続いたりすると簡単に発症します。
睡眠不足や疲労の蓄積、食事の偏りも体温調節に影響を与える要因です。
実際、救急現場では健康な若年層が熱中症で搬送されるケースも少なくありません。
だからこそ、「まさか自分が」という思い込みを捨てて誰もが備える意識を持つことが必要です。
「もしかして熱中症かも?」が分かれ道
熱中症は突然倒れるものではありません。
段階的に進行していくのが特徴です。
その最初のサインに気づけるかどうかが、重症化を防げるかの分かれ道になります。
【Ⅰ度:軽度(初期症状)】
以下の症状が現れたら、すぐに休息を取りましょう。
- 立ちくらみ・めまい(一時的な意識低下)
- 筋肉のけいれん(こむら返り)
- 大量の発汗
- 軽い吐き気、頭痛、ぼんやりするなどの体調不良
この段階では、以下の対応が非常に効果的です。
- 涼しい場所へ移動
- 衣服をゆるめて体を冷やす(首・脇・足の付け根など)
- 経口補水液やスポーツドリンクで水分と塩分を補給する
この時点で対処できれば、救急搬送を避けられる可能性も高くなります。
【補足】熱中症の重症度分類とその症状
以下は、熱中症の段階ごとの分類です。自身や周囲の体調変化に注意し、段階に応じた対応をしましょう。
【Ⅱ度:中等度(病院での診察が必要)】
- 頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感(体がだるい)
- 集中力の低下、意識がもうろうとする
- 体が動かしづらい、フラフラする
→ 自力で水分補給できる場合は、涼しい場所で休みながら回復を試みます。
→ 自力で水分が取れない・回復しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。
【Ⅲ度:重度(命の危険がある状態・緊急搬送が必要)】
- 意識がない、呼びかけに反応しない
- けいれん、手足の運動障害
- 高体温(体が熱いのに汗をかいていない)
- ショック状態(血圧低下・脈が速い)
→ このレベルの熱中症は緊急を要します。迷わず119番通報してください。
正しい知識が、救急車を本当に必要とする人を救う
私は現場で、熱中症による救急要請に何度も対応してきました。
その中には、「この方、もう少し早く休んでいれば救急搬送は必要なかっただろう」と思う軽症例も少なくありません。
もちろん、不安な状況で救急車を呼ぶことを否定するつもりはありません。
ですが、限られた救急車や医療リソースを本当に命の危険がある人のために残しておくためにも、一人ひとりの冷静な判断が求められます。
正しい知識があれば、自分を守れるだけでなく他の命を守る選択にもつながるのです。
「防げなかった」ときの行動が、命を救う
どれだけ気をつけていても、熱中症を100%防ぐことはできません。
それでも、『防げなかった』ときに正しく行動できるかどうかが、生死を分けることになります。
- 我慢しすぎず、早めに休む。
- おかしいと感じたら、その場で対処する。
この“たったそれだけ”の判断が、救急搬送を避けることにも命を守ることにもつながります。
正しい対応が、命と医療資源を守る
熱中症は防ぐことも大切ですが、『なってからの行動』こそが真の分かれ道です。
正しい知識と行動があれば、重症化を防ぎ、救急車を必要としないケースも多くあります。
そして、それはあなたの命だけでなく、限られた医療資源を守ることにも直結します。
元救急隊員として私は言いたい。
熱中症は“ならない努力”より、“なってからの判断”が命を救う。
熱中症の季節は、毎年必ずやってきます。
どうか、あなた自身と、誰かの命を守るために正しい対応を知っておいてください。
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