街中でよく見かける光景があります。
それは、前方に左折しようとしている車がいるにもかかわらず、無理に右に膨らんで追い越していく車両。
運転している本人は、「ちょっと膨らめばスムーズに抜ける」と思っているのかもしれません。
でも、その“たった数秒の短縮”が、大きな事故や命に関わる危険行為だということを、どれだけの人が理解しているのでしょうか。
私は元救急隊員として、日々さまざまな事故現場に出動してきました。
その中には、こういった“膨らみ追い越し”が原因の事故もありました。
今回は、元現場の視点から、この運転の危険性についてお話しします。
■「膨らむ」ことで生まれる、想像以上のリスク
膨らんで走行することで、以下のようなリスクが一気に高まります。
- 対向車線にはみ出す → 正面衝突の危険
- 左折車の影に歩行者や自転車 → 見落として接触
- タイミングがズレる → 左折車との側面衝突
- 後部座席の同乗者 → 強い不安や恐怖を感じる
現場に行くと、ぶつかってからでは遅いという現実を痛感します。
「まさか歩行者がいるとは思わなかった」――これは、事故を起こした運転手がよく口にする言葉です。
でも、それは“想像しなかった”のではなく“想像しようとしなかった”だけなのではないでしょうか。
■数秒の我慢ができない――それは命を軽く見ている証拠
本当に運転が上手な人は、スピードやテクニックだけでなく、『止まるべきタイミングを見極める力』を持っています。
左折車の後ろで一時停止。
それだけで、事故のリスクは限りなくゼロに近づくのです。
ほんの数秒です。
その数秒の我慢があれば、歩行者の命を守れたかもしれない。
無理な追い越しをしなければ、家族のもとに無事に帰れた命もあったかもしれない。
それを私は、何度も現場で見てきました。
■運転は「思いやり」そのもの
救急車を運転していたとき、私たちは常に「周囲への気配り」を意識していました。
歩行者、自転車、他の車両、通報者、そして傷病者。
運転とは「自分本位」では成立しない行為です。
- 周囲の流れを読む観察力
- 危険を予測する判断力
- 一瞬のミスが命に関わる責任感
プロのドライバーも、一般のドライバーも、必要なのは“技術”よりまず“意識”です。
それがなければ、いくら運転歴が長くても“危険なドライバー”になってしまいます。
■【結論】膨らむくらいなら、止まれ。
前の車が左折しようとしている。それだけで、立派な「停止の理由」になります。
抜かなくていい。
膨らまなくていい。
ただ、数秒待つだけでいいんです。
命を守るって、実はそんなに難しいことじゃない。
私が救急隊員として学んだことのひとつは、『小さな我慢が、大きな事故を防ぐ』ということ。
膨らみ追い越しをしようとするその瞬間、「その先に誰かがいるかもしれない」と、少しでも想像してみてください。
そして、止まりましょう。
あなたの判断が、誰かの人生を守ることにつながるのです。
自分の判断が誰かの命に関わることを、すべてのドライバーが忘れてはいけないのです。
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